自信喪失登山

                         片貝山荘〜僧ヶ岳一歩手前
                                               
 てっきり、この日は中止になると思っていた。どのニュースを見ても、どの天気予報を見ても、金沢の直ぐ側を台風10号が通過して行く!
 私が所属する会社の登山同好会では、夏に北アルプスの何処かへ登山する事がメインイベントになっている。今年は8月の9〜10日に立山の隣「大日岳」に登山する予定だった。ところが突然の台風10号の発生。 
  
 そこで予定を「大日岳」から富山県魚津にある「僧ヶ岳」に変更し、しかも出発を台風通過後午後1時にした。また当日は台風の影響を考慮し登山口の山荘で宴会をして、翌日登山するという変則的な計画だ。
 午後1時少し前、恐る恐る集合場所に着いた。予想に反し雨・風等の台風の影響が無い。直ぐ側に台風10号が居る筈なのに?おそらく白山が屏風の役目をし、台風の影響が無いのであろうと、言う話である。「納得納得」!気を取り直し出発となった。
    
 山荘に着くと少し雨が落ちてきた。山荘は北陸電力が運営しているそうで、発電所の側に建っていた。部屋も広くなかなか快適な山荘だった。(もちろん出来たての電気が来ていた)
 荷物を降ろし程なく乾杯となった。後から1名駆けつける事に成っている。先月岩魚の桃源郷一歩手前釣行で、お世話になったMさんである。なんとMさんは今日も登山をしているそうだ。
  
 宴会も進んでいくと、段々雨脚が強くなり風もでてきた。山荘に着いた時「釣り竿を持ってくれば良かった」と言いながら眺めていた川が見る見るうちに濁流となった。「明日は登山無理かな」という雰囲気が部屋一杯に充満した。
  
 Mさんも無事到着し、2回目の乾杯をした。もうその頃には私の気持ちの中は「登山中止!朝ゆっくり起きて、金沢に帰ろう」だった。おそらく皆も同じような気持ちだったに違いない。ビール、ワインに梅酒、食べ物は肉を炒めたものや、その他色々!話も盛り上がり、少々の小競り合いもあり、宴会は10時ごろまで続いたか。
  
 翌朝4時にMさんが出掛けた。「山頂で会おう」と言う言葉を残して。前日も登っている山を今日も登るなんて、これが皆から「仙人」と呼ばれる由縁である。でも皆さん熟睡状態。「登山するなら6時ごろから登る」という言葉を信じつつ、私はもう帰るつもりで、朝食を取っていた。日が上るにつれ良い天気になってきた。6時過ぎにリーダーK氏が起き出し、「良い天気やし、ちょっとだけ登ってくるか」
  
 結果4名が金沢に帰り、5名が7時半頃急坂に張り付いた。今まで経験をしたことが無いほどの急坂であった。「苦しい、吐きそうだ」私は最後尾を登っていたが、次第に皆から遅れ始めた。登り始めから1時間以上も急坂の状態が変わらない。昨日の宴会の疲れがあるのか?いやいや他のメンバーも同じ条件のはずなのに…。途中「日本一の雪渓」を見ることが出来たが、苦しすぎて感動も出来ない。
  
 1時間30分ほどで伊折山に着いた時、標識に僧ヶ岳まで3時間と書いてあった。「これは無理だ」と感じた。あまりも急坂が厳し過ぎたことや、時間的なこと(僧ヶ岳まで行くと下山が4〜5時、金沢には7時過ぎ、明日は仕事)で、気持ちが萎えていた。何とか成谷山1600mに着いて、ここから引き返す事になった。僧ヶ岳まで後1時間。今回は私の体力不足で、他のメンバーに迷惑を掛けた「自信喪失の登山」であった。