桃源郷一歩手前 前編

 「桃源郷」その言葉は人によって多少意味合いが違うかもしれない。でも多くの人は「尺岩魚がウヨウヨ泳いでいて、いとも簡単に釣れる場所」と考えているに違いない。私が今回釣行した場所は尺岩魚がウヨウヨ泳いでいる場所ではなかったが、ある意味で「桃源郷」だったかもしれない。
 
 7月5日(土)会社の登山同好会のメンバー7名の大人数で、K川の上流まで入り込みキャンプをし、岩魚釣りをし、宴会をする計画だ。出発地点から1時間ほどでK川への入り口赤い吊り橋を渡る。暫く歩くとブルーシートで出来たテン場が見えてきた。山師たちの中継基地だ。彼らはここを拠点とし、岩魚釣り等に出掛ける。ここから先は山を熟知した者だけが入ることが出来る世界だ。
  
 川を渡り、山を越え、それを何度も繰り返して行くと、またもやブルーシートで出来たテン場に着いた。どうやらここが今回の目的地らしい。私の会社に所属している山師M氏の常設テン場だそうだ。こんな山奥にこれだけの資材を運ぶだけでも大仕事である。
  
 重い荷物を降ろし、少し早い昼食を取った。直ぐ側が川なので昼食を取っていても落ち着かない。「早く釣りをしたい」これが正直な気持ちだった。昼食が終わり、煮炊きに使う薪拾いが始まった。対岸から何回も川を渡り薪を集めてきた。結構重労働だった。いよいよ岩魚釣りの始まりだ!
  
 釣りをするのは3名。上流の魚止めの滝を目指す。残りの4名は宴会!テン場の直ぐ下から竿を出した。すると一投目で小さ目の岩魚が釣れた。「さすがは桃源郷。尺岩魚、尺岩魚」と思いながら、小さ目の岩魚をリリースした。それから悲劇が始まった。全くと言って良い位、釣れ無いのである。たまにアタリが有っても餌のミミズに歯形を付ける程度。
    
 釣行も終わりに近くなった頃、今回の旅のリーダーであるK氏が28cm程の岩魚を釣り上げた。その地点から岩を一つ超えると、いよいよ魚止めの滝が現れた。素晴らしい滝である!暫くその絶景を楽しんでいた。「これが桃源郷か!」そう思った。程なくリーダーのK氏、山師のM氏が駆けつけ竿を出した。一番下、二段目と粘ったがK氏に一度だけアタリが有っただけで釣れなかった。三段目にも岩魚が居るそうだが数年前の崖崩れで今は竿を出せない。
   
 
 3人は少ない獲物を持って滝を後にした。どうやら本当の「桃源郷」はあの滝の上らしい。後1時間ほど山を登ると滝の上に出るそうだ。そこは40cmオーバーが釣れる正に岩魚の桃源郷だそうだ。それなら今私が行ってきたのは「桃源郷一歩手前か!」  つづく