桃源郷一歩手前  後編

 魚止めの滝からあまり釣れなかったための重い気持ちと、重い足を引きずりながら、午後3時ごろテン場まで戻どり、それからシートの下で少し横になった。もちろん疲れもあったが、夕方もう一度挑戦しょうと考えていた。川の音を聞きながらウトウトしていると、最高に気持ちが良い。
     
 30分ほどウトウトしていただろうか。良い香りがしてきて起き上がった。先程釣ってきた岩魚と山菜のカタハ(ミズ)を使って岩魚汁が出来上がっていた。早速頂く事にした。味噌仕立てで岩魚の出汁とで、大変コクがある汁である。またカタハの歯ざわりも良い。直ぐにお椀に3杯食べた。
 5時過ぎ、今度はフライフィッシングで岩魚釣りに挑戦した。テン場より下流から釣り上がったが、なかなかフライに反応が無い。テン場近くでようやく反応があったが3度程フライを見に来ただけで後は無視。もう少し上流で諦めかけた頃、不意に岩魚がゆっくりフライを咥えた。「これは塩焼きになる良いサイズ」と思いながら岩魚の引きを楽しんだ。考えが少し甘かった。強引に取り込めばよかった。下流に向かった塩焼き予定の岩魚は、上手にフライを口から外し、そして私の心に大きな風穴を作って逃げた。
       
 悲劇はその後直ぐにやって来た。対岸に渡ろうと、大きめな石の上にひょいと飛び乗ったところ、石が転がった。私も石とともに頭から川の中へ。ラッキーな事に怪我は無かったし、竿もデジカメ(防水ケース入り)も無事だったが、「泳ぎました」状態。全身ずぶ濡れでテン場に戻り、宴会に参加。岩魚が美味そうに焼けていたが、お土産用に頼まれていたもので、皆さん見るだけ。釣り班としては責任を感じる。宴会も盛り上がり、私が最初にリリースした岩魚が「今日は釣り名人が来て危険な日だから気を付けるように」という回覧版を回したのではと話も盛り上がり、夜も更けていった。
   
 翌朝4時に目が覚め、懲りずにまた釣りを始めた。やはり今日も不調で、昨日の回覧版に「今日まで気を付けろ」と書いてあったのか?貴重な1匹を持ち帰り朝ご飯用に岩魚ラーメンを作ってみた。これがなかなかの美味で、全然生臭くなくインスタントラーメンの出汁に更にコクが深まった。(グルメ番組のようなコメントになってすみません)
  
 皆が起き出し、それぞれにご飯を食べたり、それぞれ釣りを楽しんだりした後、午前8時半にテン場を後にした。途中草むらの中を歩いているとき、葉っぱの上(ちょうど顔の高さ)にマムシがいて噛まれそうになったり、崖にへばり付いて進んでいるとき、路肩を踏み抜きあわや滑落しそうになるなど、(このときは神様、ご先祖様に感謝しました)色々有ったが、何とか全員無事戻る事が出来た。今度は最上流部の「桃源郷」に挑戦するぞ!