シャワーにうたれて


 今年も早や9月、渓流釣りも後1ヶ月程になってしまった。ほんの少し前渓流釣りが解禁となって喜んでいたのに、もう終わりに近づいている。年々歳を取るのが加速しているように感じられるが、季節の移り変わりが速く感じられるのもそのせいか?残された渓流釣りの時間に少しでも多くの思い出を作るため、午前4時白峰の渓に出掛けた。
  
 渓に着き、ゆっくり釣りの身支度をしていると、すっかり明るくなった。天気はうす曇。前日の天気予報では曇りときどき雨であった。「少々の雨だったらレインウェアーも要らないかな」と思い、車の中に置いていく事にした。(後々大変後悔するはめになった)ヒンヤリした爽やかな空気の中、林道を暫く歩き川に降りた。川の水はほんの少し濁っていて、この2日間は良い天気だったので「上流では雨が降っているのか」と想像される。
  
 餌のミミズを付け第一投目。すぐにアタリがあり慎重にあわせを入れる。小さ目のヤマメが上がった。先週の釣行でチビヤマメの襲撃に会ったが、今日もそんな感じであろうか?また第一投目で釣れると、その日はあまり良い思いをしたことがない。野球の試合で「スミイチ」という言葉があるが(一回に一得点し、その後点数が入らないと云う意味)「スミイチ」に成らないよう川の神様に祈る。
  
 暫く釣り上がると、良いポイントを発見。まさにそのポイントに餌を投入しようとした瞬間、ライズ(水面を流れる餌を捕食するため岩魚、ヤマメが水面に現れること)があった。それもかなり良いサイズの。心臓の高鳴りを無理矢理鎮め、そ〜っと餌を投入した。すると直ぐにアタリがあり、慎重にあわせのタイミングを計り…?「あれ餌を放した」その後何度も餌を流すが反応なし。「まあまあ気持ちを抑えて抑えて。」「あの川のあのポイントで大きいサイズのライズがあったが釣れなかった」と云う事も後で良い思い出になる。
  
 その後やや小さめのサイズであはるが、岩魚やヤマメが飽きのこない程度に釣れ楽しませてくれた。そうこうしている内に雨が降り始め、次第に雨脚が強くなり、レインウェアーを車に置いてきた事を後悔した。それと共に川の水かさが増し濁りがより一層入る。何か大物の予感がする。大物を釣り上げた時は圧倒的に雨の日が多い。(そんなに大物は釣った事が無いですが)それもシャワーのような強い雨。少し川幅の狭まった場所の大きな岩のよれに、餌を投入。反応が無いのでそのままの状態で前に進むと、竿が曲がった。根掛かり?「つっ釣れてる」竿を立てると、想像以上に満月のように曲がる。「これは大きい」糸に必要以上テンションを掛けない様、大物を川岸に放り上げその後玉網に納めた。
  
 玉網の直径は32cm。大物はその玉網よりほんの少し大きい。暫くは放心状態で玉網に納まる大物を眺め、それからデジカメで画像を撮った。大物は想像以上に暴れ何度も玉網から飛び出そうになり、当然画像を撮るのも一苦労。画像を撮り終えその後そ〜っと大物を流れの中へ。大物はその大きさにも係わらず、ゆっくりと、川の深みに消えていった。
 尚一層雨脚が強くなり、「今日はもうこれ以上の思い出が出来ないはず」と、A級ポイントを残し納竿。
 林道に攀じ登り、シャワーのような雨にうたれ、今日の思い出を「牛が食べ物を何度も噛み締めるように」反芻しながら車へと急いだ。