能登半島に九十九湾と言う観光名所がある。そこはリアス式海岸のように海岸線が入り組んでおり、湾の数が多い事から九十九湾と呼ばれており、波も静かで景色も良く、私の好きな釣り場の一つである。
 クロダイ釣りを覚えたての頃、夜明けの九十九湾にて静かな海面に靄が立ち込め、そこに段々朝日が射してくる幻想的な風景に遭遇た。その時からこの釣り場の虜になった。と、言っても金沢から2時間以上係るので、なかなかこれないが…。
  
 随分昔の話であるが12月の今時分、近所の友人2名とで、この九十九湾にクロダイ釣りに来た時の話。
 その日は天気が良かったけれど、横に置いた竿が転がるくらい大変風が強く寒い日だった。海の向こうに立山連峰がポッカリと浮び、感激していた事を覚えている。
 友人の2人はまだ釣りを覚えたてで、風が強かった事と、非常に寒かった事で、クロダイのダンゴ釣りに苦戦していた。私もまた人にダンゴ釣りを教える程の腕もなく、また余裕もない。それなのに2人をこんな遠くまで連れてきた事に、少し後悔していた。
  
 私自身は本命のクロダイは釣れなかったが、多きなベラが釣れたり、20cm前後のメジナが良く釣れていた。寒さをこらえながら釣りの終盤、大変な事が起こった。いつものようにダンゴを海に投入し、ウキが海面に現れから暫くアタリを待っていると、微妙なアタリ。アワセを入れてみると針掛かりした。「しめた」と思った瞬間竿がググッと海面に引き込まれびくともしない。えっ根掛かり?いやいや絶対に針掛かりしたはず!超大物?沈み石の間に入り込まれた?等色んな事が頭の中を駆け巡る。
  
 竿のしなり具合を見てギャラリーが集まり始める。悪い気はしないが何が起こったか分からないのに、少し恥ずかしい。とその時その超大物が海底から離れた。リールを巻くがかなり重い。ギャラリーが尚一層近づく。超大物が海面に近くなると何だか赤っぽく見える。「えっ、もしかして真鯛?」心臓の鼓動が早くなる。ついに獲物が海面に現れた瞬間、私とギャラリーは落胆のため息をついた。獲物は蛸であった。友人に玉網ですくって貰うと、釣れたメジナに蛸が抱きついていたのである。つまり最初にメジナが針掛かりして、勢い良く海底に潜ったところ、蛸に襲われたのであった。
  
 まあ釣れたのは外道の40cm位の蛸ではあったが一つの針に一度に二匹釣れた貴重な思い出であった。
 
追伸 この話は大変珍しい事と思っていたが、案外良くあることみたいだ。北海道の波平爺さんのHPでも同じような出来事が載っていた。
御覧あれhttp://www5.ocn.ne.jp/~jelly19/uresiigedou.htm